「アンプシミュレーターを入れてみたけど、なんだか音が細い」
「ノイズだらけで使い物にならない」
ギターからDTMに入った人が、最初につまずくのがここです。
原因のほとんどは、機材の性能ではありません。
接続順とゲインの設定が、実機のアンプと違う感覚のままだからです。
むしろ怖いのは、使い方を間違えると、せっかくのギターの音が劣化してしまうこと。
高い機材を使っても、設定ひとつで台無しになります。
この記事では、アンプシミュレーターの基本を、ギタリストの目線で整理します。
読み終わるころには、自分の音がなぜ細いのか、その理由が分かるはずです。
アンプシミュレーターとは何か
アンプシミュレーターは、本物のギターアンプの音をソフトウェアで再現する仕組みです。
実機のアンプを買わなくても、パソコンの中でアンプを鳴らせます。
真空管アンプ、キャビネット、マイクの位置まで、画面の中で組み替えられるのが強みです。
代表的なものに、IK MultimediaのAmpliTubeやTONEXがあります。
Logic Proのような付属のDAWにも、標準のアンプシミュレーターが入っています。
実機アンプとの一番の違い
実機は、アンプとスピーカーが一体です。
音を出せば、そのまま耳に届きます。
アンプシミュレーターは違います。
音の通り道を、自分で組み立てる必要があるのです。
この「通り道」こそが、次に説明する接続順です。
基本の接続順を理解する

アンプシミュレーターの中は、いくつかのパーツに分かれています。
それを正しい順番でつなぐことが、良い音への近道です。
もっとも基本的な接続順は、次のとおりです。
step
1ギター(インプット)
まずはギターの信号が入ってきます。ここの音量レベルが、すべての土台になります。
step
2コンパクト系エフェクト(歪み・ワウなど)
アンプの前に置くエフェクトです。実機でいう、足元のエフェクターと同じ位置です。
step
3アンプ(プリ・パワー)
音作りの中心です。ここのゲインで歪みの量が決まります。
step
4キャビネット(スピーカー)
アンプの音をスピーカーで鳴らす部分です。音の太さや空気感が、ここで大きく変わります。
step
5空間系エフェクト(リバーブ・ディレイ)
最後に残響を足します。アンプの後ろに置くのが基本です。
ポイント
歪みはアンプの「前」、リバーブやディレイはアンプの「後ろ」。
これが迷ったときの基本形です。
順番を間違えるとどうなるか
たとえば、リバーブをアンプの前に置いたとします。
すると、残響にまで歪みがかかります。
結果、輪郭のぼやけた、こもった音になります。
実機で足元にリバーブを置く人が少ないのと、同じ理由です。
ゲインの考え方
接続順の次につまずくのが、ゲインです。
ギタリストにとって、一番なじみのある言葉のはずです。
ですが、アンプシミュレーターのゲインは、少し奥が深いのです。
ゲインは「歪みの量」だけではない
多くの人は、ゲインを「歪みのツマミ」だと思っています。
半分は正解です。
ですが、アンプシミュレーターには、もう一つ大事なゲインがあります。
それが入力(インプット)ゲインです。
ギターから入ってくる信号が、強すぎても弱すぎてもいけません。
ここが合っていないと、どれだけアンプを調整しても良い音になりません。
注意ポイント
入力レベルが大きすぎると、音が割れます(クリップ)。
小さすぎると、ノイズに埋もれて音が細くなります。
適正な入力レベルの目安
DAWのメーターを見ながら、調整します。
ピーク時で、マイナス12dB前後を目安にしてください。

赤く点灯するまで上げる必要はありません。
少し余裕を残すくらいが、ちょうどいいのです。
アンプのゲインは「上げすぎない」
宅録でありがちな失敗が、ゲインの上げすぎです。
実機のアンプを爆音で鳴らした記憶があると、つい歪みを足したくなります。
ですが、録音した音は、ミックスで他の楽器と重なります。
歪みすぎた音は、輪郭が消えて、バンドの中で埋もれます。
ライブで「いい音」と、録音で「いい音」は別物なのです。
メモ
「単体で聴くと物足りないくらい」が、ミックスではちょうどいい歪み量になることが多いです。
音が細い・痛いを防ぐ3つのコツ
接続順とゲインを押さえたら、最後の仕上げです。
細さや痛さを防ぐ、3つのコツを紹介します。
- キャビネットのマイク位置を変えてみる
- 高域を少しだけ削る(イコライザー)
- ローカットで余分な低音を整理する
とくにキャビネットのマイク位置は、音を劇的に変えます。
中心に近いほど高域が強く、外側へずらすほど丸くなります。
「痛い」と感じたら、まずマイクを少し外側へ動かしてください。
オーディオインターフェースの入力設定でも音は変わる
ここまではソフト側の話でした。
ですが、ギターを挿すオーディオインターフェース側の設定でも、音は大きく変わります。
むしろ、ここを間違えると入り口の時点で音が劣化します。
どれだけアンプシミュレーターを調整しても、元の音が痩せていたら取り戻せません。
INST(Hi-Z)とLINEの違い

多くのインターフェースには、入力を切り替えるスイッチがあります。
「INST」「Hi-Z」「LINE」といった表記です。
この切替は、信号のインピーダンスを合わせるためのものです。
むずかしい言葉ですが、ざっくり「信号の流れにくさ」のことだと思ってください。
ギターを直接挿すときは、INST(Hi-Z)にします。
パッシブのギターは信号のインピーダンスが高く、LINEのままだと高域が落ちて、こもった細い音になるからです。
ポイント
ギター直挿し → INST(Hi-Z)
エフェクターやアンプシミュレーター経由 → LINE
これが基本の使い分けです。
逆に、足元のエフェクターやマルチを通した音は、すでにレベルが整っています。
その場合はLINEで受けるのが基本です。
+48V(ファンタム電源)はOFFが基本
もうひとつ大事なスイッチが、+48Vです。
これはコンデンサーマイク専用の電源です。
ギターやエフェクターを挿すときは、必ずOFFにしてください。
不要なときにONのままだと、機材を傷める可能性があります。
注意ポイント
+48Vは「コンデンサーマイクを使うときだけON」。
ギター・エフェクターのときはOFFが鉄則です。
表記はメーカーで違うが役割は同じ
これらのスイッチは、ほぼすべてのインターフェースに付いています。
ただ、表記がメーカーごとに少し違うだけです。
| 役割 | よくある表記 | 設定の目安 |
| ギター直挿し | INST/Hi-Z/GUITAR | ギターを直接挿すときON |
| ライン入力 | LINE/MIC-LINE | エフェクター経由はこちら |
| ファンタム電源 | +48V/Phantom/P48 | コンデンサーマイク時のみON |
| 入力レベル | GAIN/TRIM | 赤が点かない範囲で控えめに |
たとえば筆者が使っているTASCAMのUS-2x2HRも、この4つがそのまま並んでいます。
表記の違いさえ分かれば、機種が変わっても迷いません。
まとめ
アンプシミュレーターの基本を、もう一度おさらいします。
- 歪みはアンプの前、空間系はアンプの後ろ
- 入力ゲインはマイナス12dB前後を目安に
- アンプのゲインは上げすぎない
- 痛いときはマイク位置と高域を見直す
- ギター直挿しはINST、エフェクター経由はLINE
- +48Vはコンデンサーマイク以外OFF
この4つを意識するだけで、宅録ギターの音は大きく変わります。
機材を買い足す前に、まずは設定を見直してみてください。
今ある環境で、もう一段いい音が出せるはずです。