「リスニング用のヘッドホンでミックスしたら、スマホで聴いたときに低音がスカスカだった……」
宅録を始めたギタリストなら、一度は経験する失敗です。
原因はシンプル。普通のヘッドホンは音楽を「楽しく聴かせる」ために音が味付けされているからです。その音を基準にミックスすると、他の環境で聴いたときにバランスが崩れます。
そこで必要になるのがモニターヘッドホン。この記事では、ギター歴13年・DTM歴5年のryoが、宅録ギタリスト目線でモニターヘッドホンの選び方とおすすめモデルを解説します。
こんな方におすすめ
- 初めてのモニターヘッドホンで失敗したくない
- 密閉型と開放型、どっちを買えばいいか分からない
- ギターの録音もミックスも1本でこなしたい
モニターヘッドホンとは?リスニング用と何が違う?
モニターヘッドホンは、音楽制作の現場で「音を正確にチェックする」ためのヘッドホンです。
リスニング用との違いはここに集約されます。
| モニターヘッドホン | リスニング用ヘッドホン | |
|---|---|---|
| 目的 | 音を正確に分析する | 音楽を楽しく聴く |
| 音の傾向 | フラット(味付けなし) | 低音や高音を強調 |
| 得意なこと | ミックスの判断・粗探し | 気持ちいいリスニング |
| 接続 | 有線が基本 | ワイヤレスが主流 |
ちなみに「音がフラット」というのは、最初は地味に感じます。低音ドンドン、高音キラキラの派手さがないからです。
でもその地味さこそが武器。音源のアラがそのまま聴こえるので、ミックスの判断が正確になります。
密閉型と開放型の違い|宅録ギタリストはまず密閉型
モニターヘッドホンには大きく2タイプあります。密閉型と開放型です。
ここがこの記事で一番大事なポイントなので、じっくり解説します。
密閉型|録音に必須。最初の1台はこっち
密閉型は、ハウジング(耳を覆う部分)が完全に閉じた構造です。
密閉型の特徴
- 音漏れがほぼない → マイク録音時に必須
- 遮音性が高く、外の音が入りにくい
- 低域がしっかり出る
- 長時間使うと蒸れやすい・疲れやすい
ギタリストにとって決定的なのは音漏れの少なさです。
マイクでギターや歌を録るとき、ヘッドホンから漏れたクリック音やオケの音をマイクが拾ってしまうと、その録音は使えません。
録音をするなら密閉型は必須装備。これが「最初の1台は密閉型」と言われる理由です。
開放型|ミックス・長時間作業の相棒
開放型は、ハウジングの背面がメッシュなどで開いている構造です。
開放型の特徴
- 音場が広く、スピーカーに近い自然な聴こえ方
- 長時間でも疲れにくく、蒸れにくい
- 音の定位や奥行きを判断しやすい
- 音漏れが大きい → 録音には使えない
開放型の魅力は、音の広がりです。
密閉型は音が頭の中にこもる感覚がありますが、開放型はスピーカーで聴いているような自然な距離感で鳴ります。
リバーブの深さや、ギターを左右に振ったときの空間の見え方。こういう判断は開放型のほうが圧倒的にやりやすいです。
使い分けの結論
ココがポイント
録音 → 密閉型/ミックス → 開放型(または密閉型と併用)。1台目は録音にもミックスにも使える密閉型。慣れてきたら2台目に開放型を足すのが王道ルートです。
ギタリスト目線の選び方|4つのチェックポイント
① 密閉型か開放型か
前述のとおりです。録音するなら密閉型から。打ち込み中心でマイクを一切使わないなら、最初から開放型もアリです。
② インピーダンスとオーディオインターフェースの相性
ヘッドホンのスペック欄にある「Ω(オーム)」がインピーダンスです。
ざっくり言うと、数値が高いほど鳴らすのにパワーが必要になります。
| インピーダンス | 目安 |
|---|---|
| 〜80Ωくらい | 一般的なオーディオインターフェースで問題なく鳴る |
| 250Ω前後 | 音量が取りにくい場合あり。出力に余裕のある機材向け |
後で紹介するbeyerdynamic DT 990 PROの250Ω版などは、エントリー機のインターフェースだと音量不足を感じることがあります。
オーディオインターフェース自体の選び方はこちらで解説しています。
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③ 装着感と重量
地味ですが超重要です。宅録は1〜2時間ぶっ続けの作業が当たり前。重い・締め付けがきついヘッドホンは作業の集中力を削ります。
目安として、200g前後なら軽量、300gを超えると長時間はやや疲れます。
④ イヤーパッドとケーブルの交換可否
モニターヘッドホンは消耗品との戦いです。イヤーパッドは数年でボロボロになります。
パーツ交換できるモデルなら、10年単位で使えます。定番機が定番であり続ける理由のひとつです。
おすすめモニターヘッドホン【密閉型】
ここからは具体的なおすすめモデルです。まずは最初の1台に向く密閉型から。
※価格は2026年6月時点の実売目安です。変動するので購入時にご確認ください。
CLASSIC PRO CPH7000|初心者はまずこれでいい。筆者も使い倒した入門機
サウンドハウスのオリジナルブランドCLASSIC PROの密閉型モニター。税込5,980円という驚異的な価格です。
そして先に結論を言います。初心者の最初の1台は、これでいいです。
音質は色付けの少ないナチュラル系。サウンドハウスの売れ筋に常にランクインしている超定番で、レビュー数は370件超え。価格帯を超えた解像度が評価されています。
重量は約240gと標準的。ねじ込み式の標準プラグ変換アダプタが付属するので、オーディオインターフェースにもそのまま挿せます。
ココがおすすめ
「まず宅録を始めること」が最優先の人はCPH7000一択。モニターヘッドホンに10万円かけるより、6,000円のCPH7000+残りの予算で曲を作り始めるほうが、確実に上達は速いです。
SONY MDR-CD900ST|日本のスタジオ標準機
1989年の発売以来、日本のレコーディングスタジオで最も使われてきた業界標準機です。実売18,000円前後。
音の特徴は、中高域の解像度がとにかく高いこと。ボーカルやギターの細かいニュアンス、ノイズの粗探しが得意です。
約200gと軽量で、パーツがすべて交換可能。壊れても直しながら一生使えます。
ココに注意
CD900STはプラグが標準フォーン端子のみ・ケーブル着脱不可・低域は控えめ。ミックスで低音の量感を判断するには不向きな面もあります。あくまで「録音チェックの最強機」と捉えるのがおすすめです。
audio-technica ATH-M50x|海外スタジオの定番
CD900STが日本の標準なら、ATH-M50xは世界の標準。海外レビューサイトやAmazon.comで圧倒的な評価数を誇る、オーディオテクニカの代表作です。実売20,000円前後。
音はモニターらしいフラットさを保ちつつ、低域もしっかり出るバランス型。録音からミックスまで1本でこなせる万能機です。
ケーブル着脱式で、折りたたみも可能。海外発の音楽……オルタナやグランジ系のリファレンス音源と相性がいいのも個人的に好きなところです。
SONY MDR-7506|海外定番のSONY機。コスパ良好
CD900STの兄弟機で、海外スタジオで標準機として使われてきたモデル。実売12,000円前後と手頃です。
CD900STとの違いは、低域が少し出ることと、ミニプラグ+標準変換でPCにも挿しやすいこと。カールコードと折りたたみ機構で取り回しも良好です。
予算を抑えつつ定番の音を手に入れたい人の有力候補です。
beyerdynamic DT 770 PRO|低域の見えるドイツの定番
ドイツの老舗beyerdynamicの密閉型定番機。実売20,000円台前後です。
特徴は密閉型トップクラスの低域の見え方と、ベロア素材イヤーパッドの快適さ。長時間作業でも蒸れにくいのは密閉型として貴重です。
80Ω版と250Ω版があるので、一般的なインターフェースなら80Ω版を選べばOKです。
SONY MDR-M1ST|CD900STの現代版・上位機
2019年にソニーが「次世代スタジオ標準」として投入したモデル。実売30,000円台です。
CD900STの解像度はそのままに、現代の音楽制作に必要な低域再生力とハイレゾ帯域への対応を加えた設計。ケーブルも着脱式になりました。
予算に余裕があり、録音もミックスも高いレベルで1本にまとめたい人の選択肢です。
おすすめモニターヘッドホン【開放型】
続いて、ミックス用の2台目に向く開放型です。
SENNHEISER HD 560S|ミックス用開放型の優等生
ゼンハイザーの開放型モニター。実売30,000円前後です。
広い音場とフラットな特性で、スピーカー再生に近い距離感で聴けます。低域は誇張されないため、量感の最終判断はスピーカーや密閉型と併用するのが前提です。
逆に言えば、定位やリバーブの奥行きを見る作業ではかなり信頼できます。
AKG K702|広大な音場。定位チェックの名手
AKGの開放型定番機。実売20,000円台です。
特徴は開放型の中でも特に広い音場。音をパンで左右に配置したときの見え方が抜群で、ギター2本+ベース+ドラムの定位を整理する作業に向きます。
高域寄り・低域控えめの傾向があるので、こちらも低音の判断は他の環境と併用が前提です。
beyerdynamic DT 990 PRO|解像度特化。粗探しの鬼
DT 770 PROの開放型版。実売20,000円前後です。
細部の解像度が非常に高く、ノイズや定位のズレを見つける能力はトップクラス。一方で高域がやや強調気味なので、シンバルやサ行が刺さって感じる人もいます。
ココに注意
定番のDT 990 PROは250Ωの高インピーダンス仕様。エントリー機のオーディオインターフェースだと音量が取りにくい場合があります。購入前に手持ち機材のヘッドホン出力を確認しましょう。
比較表|密閉型・開放型おすすめ一覧
| モデル | タイプ | 実売目安 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| CPH7000 | 密閉型 | 5,980円 | 入門・最初の1台 |
| MDR-7506 | 密閉型 | 約12,000円 | 録音+ミックスを安く |
| MDR-CD900ST | 密閉型 | 約18,000円 | 録音チェック・国内標準 |
| ATH-M50x | 密閉型 | 約20,000円 | 1本で万能・海外標準 |
| DT 770 PRO | 密閉型 | 約20,000円台 | 低域重視・長時間作業 |
| MDR-M1ST | 密閉型 | 約30,000円台 | 上位志向・現代の標準 |
| HD 560S | 開放型 | 約30,000円 | ミックス・空間の判断 |
| AKG K702 | 開放型 | 約20,000円台 | 定位チェック・音場重視 |
| DT 990 PRO | 開放型 | 約20,000円 | 解像度・粗探し |
迷ったらこれ|目的別の結論
目的別おすすめ
- とにかく安く始めたい → CLASSIC PRO CPH7000(筆者も最初はこれ)
- 1本で全部こなしたい → ATH-M50x
- 録音チェックを極めたい → MDR-CD900ST
- 予算1万円ちょっとで定番 → MDR-7506
- 2台目のミックス用開放型 → HD 560S または AKG K702
よくある質問
Q. モニタースピーカーとどっちを先に買うべき?
ヘッドホンが先です。理由は3つ。
- 夜でも作業できる(宅録の作業時間は夜が多い)
- 部屋の音響の影響を受けない
- 同価格帯ならヘッドホンのほうが解像度が高い
スピーカーは部屋の環境が整ってからで遅くありません。モニタースピーカーの選び方は別記事で解説予定です。
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Q. ゲーミングヘッドセットじゃダメ?
制作用途にはおすすめしません。ゲーミング系は足音や効果音を強調するチューニングがされていることが多く、フラットさとは真逆の設計だからです。
Q. エージング(慣らし)は必要?
諸説ありますが、気にしなくてOKです。それより自分の耳をそのヘッドホンの音に慣らすことのほうがはるかに重要です。よく知っているリファレンス曲を繰り返し聴き込みましょう。
Q. 録音にはマイクも必要?
アンプをマイクで録るなら必要です。ライン録りとマイク録りの違い、ダイナミックマイクの選び方は別記事にまとめています。
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まとめ|密閉型から始めて、開放型で仕上げる
最後にこの記事のポイントをまとめます。
この記事のまとめ
- モニターヘッドホンは「楽しく聴く」ではなく「正確に判断する」ための道具
- マイク録音するなら音漏れの少ない密閉型が必須
- 最初の1台は密閉型。予算重視ならCPH7000で十分始められる
- 開放型はミックス・空間判断・長時間作業に強い。2台目で検討
- 高インピーダンス機はインターフェースの出力を要確認
モニターヘッドホンは、宅録の「耳」になる機材です。一度買えば10年単位で付き合えるので、しっかり選んで損はありません。
宅録全体の始め方は、こちらのロードマップからどうぞ。
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